スレイヤーは己の持ちうる最大の攻撃を持って、この哀れな化け物を消す事にした。
自分のマントを引っつかむようにして、力を注ぎ込む。それだけでマントは広がり、伸び、十メートルぐらいの大きさを持つに至った。
それも無造作に相手を叩きつける。
・・・鈍い音が響き、エディーは地面に叩きつけられ、かなり浮かんだ。
それはまだ、序章に過ぎない。
スレイヤーは跳んだ。己の飛ばしたエディーよりもさらに高くに、だ。
そこで氣をため・・・一気に開放。
"V字型ダンディー"
まあ、V○ラッシャーと何ら変わらない攻撃だが、それは確実にエディーの体を崩壊させ始めていた。
そして、Vの字に切り付けた後、スレイヤーはエディーよりも早く落下し、奴が落ちてくるのに合わせて、最後の攻撃を放った。
"デッド オン タイム"
思いっきり腰を捻り、その反動を利用して、エディーに突っ込む。
その速さ、攻撃力、迫力、どれを取っても今までの技を超えていた。
Cは今更ながら、こんな化け物と戦っていたと言う事に、身を震わせた。一度だけ。
そんな自分を否定するように、彼女はスレイヤーとエディーの戦いに目を向け直した。
・・・・・・驚いた事に、まだエディーは生きていた。
「ソ、ソウカ・・・ナ、ナニモ・・・オマエノ伴侶ニ拘ル必要ハ・・・無イ――――――!!」
生きていたとは言え、すでに四肢の三分の一は失って、満身創痍の状態のはずなのに、それが嘘のような速度で、エディーは"C"に襲いかかった。
「オマエノ体ヲ・・・貰ウウウゥゥゥーーーーーー!!」
驚きのあまり、Cは状況が理解出来なかった。
・・・が、体は、過酷な訓練と実践を積んできたその体は、意思に関係なく的確に動いた。
「セブン」
だらしなく持っていた第七聖典を素早く構えなおす。
聖なる刻印が光る。
力がこもる。
「コード・・・」
狙いをエディーの胸につけて・・・
密着した刹那、撃つ。
「スクエアアァァ!!」
杭のような物体は、全く狙いを外す事無く、しっかりとエディーの左の胸に突き立った。
やがて、永遠にも感じられた一瞬が過ぎ、杭が元々の姿―――紙―――に戻ると、エディーは完全に崩壊し始めた。
「ナ、バ、馬鹿ナァアァアァァァ!!!!何故ダ!!何故コンナモノゴトキニイィ!!」
「やれやれ・・・それが転生批判の聖典と言うことも知らんのかね?対吸血鬼用の武器だが・・・」
「禁獣にも効果は抜群でしたか」
呆れたようなスレイヤーの言葉と、漸く我に還ったCの言葉・・・二人の言葉はエディーに聞こえたか分からない。
エディーは・・・そのまま崩れ落ちるでもなく、吸血鬼の様に灰に還るでも無く・・・無に還っていた。
「やれやれ・・・彼に引導を渡すのは私の役目だと思っていたが・・・君に取られてしまったな」
Cはなんと言ったらいいか分からない表情になり黙り込んだが、スレイヤーはさらに言葉を続けた。
「だがまあ・・・君がここら一体の街を滅ぼした化け物を退治すると言う役目は果たせたわけだ。それでよしとするか」
確かに、とCは顔を上げたが、更なる問題点が思い起こされた。
(・・・どうやって報告し様か)
吸血鬼なら灰とかを持って帰るか、もしくはその所持品を持って報告するが・・・エディーは正に何も残さずこの世にぐっばいしてしまった。
・・・不思議な事に、すでに彼女の思考から、スレイヤーを倒すということは除外されていた。