「わあ」
 と。女の子は声を失った。目はまんまるに開いて輝き、口も同じく円を描いていた。まだまだ始まったばかりの彼女の人生で、一等の喜びがそうさせたのだ。 視線の先には、目を瞑り、頭を垂れる黒猫がいた。

「気に入ったみたいね」
「レオナさん」
 固まっていた小学生の女の子を解凍したのは、彼女とは全く違う、大人の色香を持った女性だった。
 後頭部に向けて斜めに切り上がっていく濃藍のミドルロングに、蛇を思わせる鋭い目付き。一見刺々しく、近寄りがたい雰囲気が漂っていた。細面の美人であ ることも、それに拍車をかけていた。だが、女の子に向ける目には、怖さよりも慈愛が満ちていた。

「この子が、あなたのリンカーよ」
「あ、あの。本当に……?」
「ええ。嘘なんてつくものですか」
「でも、あの、本物の猫さんだったりとか、しない?」
 女の子の言葉に、大人の女性/レオナは、きょとんと目を丸くした。彼女にしては珍しい反応。次いで、おかしげに笑い出したのも、彼女を職場でしか見てい ない者からしたら、天地がひっくり返るような珍事だった。

「レ、レオナさんっ」
「いえね。ごめんなさい。久々に、ツボに入ったわ。ええ、そぷら。あなた、わたし専属のお笑い芸人さんにならない?」
「もうっ! 知らない!」
 ぷくりと、餅のような頬が膨らんでも、レオナの笑いは止まなかった。
 そこに、もう一人の女性が加わった。両手には、料理が山盛りになった大皿を掲げ ている。扉が半分閉まっていたので、行儀が悪いのを承知で、足で開いての登場だった。

「あーあー。はっかせー、嫌われちったんじゃないかい~?」
「いいのよ。そぷらはいい子だから、こんなことじゃわたしを嫌いにはならないわ」
「自信満々だねい」
 よ、と。両手の大皿を器用に下ろし、テーブルに並べていく女性。レオナとはまた違う、大人の女である。
 ざっくりと切り落とし、無造作に散らしたかの熾火色の髪。褐色の肌で、一際目立つ白い歯が覗く口元。そしてそこに浮かぶ笑みは、なんというか、男らしい 野性味に溢れている。
 だが、体つきは違う。熱の籠もりやすい調理場で、朝からずっと料理を続けていたため、彼女の薄手のTシャツは肌に張り付いて、その凹凸をありありと示し ている。豊満なという形容がこれ以上なく当てはまる胸部である。それが、透けんばかりの汗の張り付きで、本能を揺さぶる無敵のコンボを繰り出していた。
「……ゆに。貴女、もうちょっと慎みを持ったらどう? 見えるわよ」
「え? あー、胸? ま、いいんじゃない。減るもんじゃないし」
「そう言う問題じゃないのよ」
「まあまあ」
 あっはっはと笑う豪快さ。笑う度に、注意したものが揺れるものだから、レオナも溜息を吐くしかなかった。
「ちぇ-。博士は堅いなあ。そぷらはどうかなっと。お、ぷにぷにだなー」
「きゃ、やだあ!」
 膨れていた頬を突かれるのを嫌がり、そぷらは、必死で逃げようとする。しかし、そこは百七十を超す長身のゆに。長い手で逃げ道を塞ぎ、抱き留めてから、 思う存分にぷにぷにを再開するのだった。

「うりうりうり~」
「もうもうもう! ゆにねーちゃも、嫌い!」
「あっははー。あたいは、大好きさー」
「何しているんだか。それよりもほら。貴女も、さっさとプレゼントを渡したらどう」
「ええ? まだケーキも出してないのに、気が早いんじゃ」
「いいのよ。いいことはさっさと。嫌なことはNo thank youがわたしの主義よ」
「嫌なことにも、市民権をやったりは」
「嫌よ」
 鋭く切り捨てるレオナ。あちこち尖った彼女が言うと、言葉まで刃になったようにプレッシャーがある。

「相変わらずの突っ慳貪な言い方だなー。もうちょっと抑えようよ」
「そうね。子供相手なら気を付けるわ」
「相変わらずの子供好きだねい。見た目から、誰が想像できるでしょう……って、あいたっ」
 額に衝撃を感じたゆにが見たものは、飛んでくる輪ゴムだった。
「誰が、見た目に、合わないって?」
「あ、ちょ、いたっ。地味に痛いからヤメテ~!」
 連射に耐えきれず、そぷらを手放して撤退。一部始終を間近で見ていた彼女は、不安そうにレオナを見やる。すると、その不安を打ち消すように、レオナが笑 う。

「大丈夫よ。あの子もね、そんなことじゃ怒りはしないし、それに今引っ込んだのは――――」
「じゃじゃーん! プーレーゼーンートー!」
「あれのためだから」
 親指でレオナが背後を指すと同時、プレゼントを携えたゆにが、再登場していた。自分の身長ほどもある箱を見て、そぷらの顔にも、再び笑顔が戻った。

 

 ゆにの持ってきたプレゼントの開封は、ケーキの後のお楽しみとして、そぷらの後ろに置いておかれた。うずうずしているのが丸わかりのそぷらを見 て、ゆには、からからと笑う。
「で?」
「なに」
「そっちのプレゼントは、この子猫ってことでいいのかい」
 頭を垂れたままの子猫を優しく抱え上げると、彼女はそう聞いた。
「ええ。わたしの、というよりは、そぷら兄からの発注、わたし作の、と言った所ね」
「お兄ちゃん?」
 それは聞いていなかったと、そぷらは、はたと止まる。
「ええ。あなたは、不思議なことに普通のリンカーが合わないようだから、特別に作ってくれって。要らないというのに、わざわざ大金まで用意してね」
「そうなんだ……そっか、お兄ちゃんが」
 またも嬉しさの余り頬が弛むのを堪えきれない。自然と顔を両手で挟むようにして、熱いほっぺたを押さえる。"会ったことのない"兄だが、こうやって、こ とあるごとにプレゼントは欠かさない彼も、目の前の二人と同じくらい、彼女は好いていた。

 だが、
「今日も、来れないの?」
「……そうね。今日もダメだったみたいね。ゆに?」
「ごめんっ! 急な用事が入ったんだ。隊長抜きだとダメだって……その」
「そうなんだ。うん、分かった」
 プレゼントは貰えても、いつも会えない。それだけが心残りだった。

「い、いつも会いたいって言ってるんだよ。これホントだからね、そぷら! ただ、毎度毎度都合がつかない……っていうか、つきそうになって、撤回さ せられるというか」
「根性が足りないわね」
「ええ? ……えええ? 根性の問題じゃないよう」
「バカをお言い。わたしならこの通り、世界の首脳が集う会談よりも、そぷらの誕生日を優先するわ」
「いいっ!? ちょ、そこは出て! 博士クラスだと洒落になんないんだよ! 実際にやってそうだしさあ――――」
「いい加減、呼び出しがうるさいわね。サイレントマナー、と」
「マジだー?!」
「……わあ」
 言動はこうだが、彼女は近代最高の著名人である。"魔術"の発明者、刺刀レオナを知らぬ者は、文明人でないと言われるまでの権勢ぶりなのだ。
「まさか~……だよね?」
 そぷらはちょっぴり、TVをつけるのが怖くなった。

「ま、そんなことは、本気でどうでもいいのよ」
「うわあ、言い切った。よくないよっ。よくないって、博士!」
「いいのよ」
「いや、そーは言っても」
「いいの」
「ええと」
「いい」
「……はい」
 無理で道理を引っ込めさせる悪しき実例を繰り広げた後、レオナは、そぷらに振り直る。
「さあそぷら。そろそろ起動させましょう、その子を」
「あ、そっか」
「ええ。ゆにが来るまでと待っていたでしょう」
 その言葉に、ゆにの目がきらきらと輝く。「そぷらぁ、あんたって子は、ホントに可愛いなあっ、もう!」
「わあ! ほ、ほっぺたを突くのはもう止めて!」
「話が進まないからどきなさい」
 文字通り、ゆにを摘んで剥がすレオナ。ほっそりとした外見からは予想もつかないが、彼女は意外と力が強い。

「まず、その子の頭に触れて。そっとでいいわ。それで、五秒ほど待って」
「こう?」
「ええ、それでいいわ」
 そして五秒後、ゆっくりと子猫の目が開いた。
「はじめましてー。あなたのことを教えて?」
「わ、喋った」
「リンカーですもの」
 当然と頷く。だが、彼女と違い、リンカーに触れることもままならなかったそぷらにとっては、驚きが優る。ましてや、猫にしか見えない相手が喋ったとなれ ば尚更だ。
「動物のリンカーは、キノ君も連れていたけど、やっぱりビックリするもん」
「そうだよ博士ー。普通はビックリするもんさ。あ、次はどうするんだい」
「貴女もやったことでしょ、忘れたの? まず、DNA情報の登録よ。少しでいいから、針か何かで指先を刺して血を……」
「刺すの?」恐怖で潤む目。
「……刺す代わりに、その子の前に手を出して。舐めて貰いなさい」
「うおおい! あたいの時は、結構な量取ったじゃんか! 注射器一本分っ」
「黙りなさい」
 ゆにの突っ込みを、レオナは一言で押さえ込む。その間も、リンカーの起動は進む。

「あなたは、摩文仁そぷら?」
「はいっ」
 元気よく返事をすると、ちらりと猫の髭先が光った。
「博士。この子の口調」
「丁寧すぎて変に威圧するより、こっちの方が友達になれそうでしょ」
「うーん。まあ、そうかな」
 大人二人のやりとりを尻目に、何度か猫は髭先を光らせていた。
「僕の名前を決めて?」
「うん、と……」

 ちらりと目を移す。すまし顔で、レオナがコーヒーをすすっていた。お祝いなのにと思い、しかし、お陰でそぷらの脳裏に、ひらめくものがあった。
「シェル!」
「名前?」
「うん! あなたの名前、シェルにするよ!」
「分かったー」
 処理が進む中、レオナを横目で窺う。いつも通りだった。むしろゆにの方が、「あー」と、笑っているような悔しいような顔をしていた。

「そぷらぁ~。シェルって、貝じゃないよね?」
「わたしを見て思いついたのよ。コンピュータの方でしょう。それに、働きを考えるなら、かなり的確よ」
 ふふふ、と笑いながらレオナ。いつも通りに見えたが、口角はホンの少し上がっていた。
「がくっ。博士に負けたぁ!」
「わ、わ、わ。ゆにねーちゃ! 違うの~!」
「初期設定完了!」
「あ、終わった」
「そ、そぷらー?!」
 待ってーと手を伸ばすも、移り気な子供は、子猫リンカーに意識が向かっている。


 


 

 教室に響くのは、一人の男の声だった。肉声ではなく、昔懐かしのカセットテープに録られたものだ。
<第四十四代大統領バラコ・オマハだ。この放送を、誰かが聞いていると信じて、全帯域に乗せて発信する>
「ほいストップ。分かるな~? これ、かつての超大国のトップの声やで」
 カセットを止めた女性は、再生ボタンを押した人物だった。
 柔らかく丸みのあるショートカットで、側頭部の髪は後ろに折り返して、細い髪留めで抑えている。
<わたしが今感じているのは、これ以上ない屈辱である。今の日を、迎えてしまったことを、わたしは悔しく思う。すなまい、諸君。わたし達は、状況を変える ことができなかった>
 手が強く擦れ、ぎゅうと鳴く。彼の残念を、指の先すら示していた。
<これを聞く全ての者達よ、頼む。わたし達の後に続き、必ず奴らを討ち取ってくれ。わたしは、君達の反撃を信じている。信じているからこそ、最後の狼煙を 上げよう。我々は、我々の持ちうる全ての火を、人類反撃の狼煙とする! >
 宣言に続き、重厚な鉄の擦れる音がした。そして、何かのスイッチが押され、二つの鍵が同時に回される音が続いた。
<Yes, you can>
 直後、スピーカーを破壊するような大音声が一度。終には音が途切れた。

 

「ほな、巻き戻ししといて……っと」
 みわみわとカセットテープが巻き戻るのを確認し、「――――ちゅーわけで、今のが当時世界最大と言われた国の大統領最後の言葉やったのやけれど……。ど や? 聞き取れたかいな? 今の放送の感想文が今回の宿題やから、ほなよろしゅー」
 カセットの始まりからやけに静かだった教室が、最後の言葉に反応し、一挙にざわめく。
「はいっ! はいはいっ、先生! いいですかセンセー!」
 勢いよく椅子を弾き、細い眼鏡をした少女が立ち上がった。アピールのため、手も大きく振っていたので、耳の傍を通り体の前に垂らした三つ編みが、激しく 揺れていた。
「ほいほいっと、アー……阿嘉チャン」
「何気に忘れていましたね、先生。あと、その呼び方は生まれて間もない感じになるので止めてください」
「ややわー、忘れるわけないやん。細かいこと気にしたらあかんでー、いい女になれへんよ。で、なんや」
「……アバウトすぎて先生みたいになるのも、ちょっと勘弁したいというのが本音ですけど」
「生徒のそんな本音は聞きとうなかった! うう、はよ質問入ってくれへん?」



<はいはーい、ニチコンハー。人も歩けば、魔物に当たる今日この頃、如何お過ごしでいらっしゃるー? おおう、あいやー。怖いネー。サテライトスタ ジオだから、みんなの目が冷たいヨー。石は置いてくれないかなー、そこのおねーサン。こう見えて防弾ガラ……あちゃー。遅かったネー。スタッフー、救急車 4649-。
 はいはーい。それじゃいつも通り、公共の毒電波こと、ラジオ『光よ、あって下さいませ?』をお送りしますですますよゥー。とー、言っても主に喋るのは、 ワタシじゃなくて、ゲストの一般人Aさんヨー。きゃハー、いつも通りー。
 はいはーい。そういうわけで、一般人Aさんの紹介ネー。ええと、まず男の人でー……まあ、ぶっちゃけ出身地以外どうでもいいんだネー。顔もまあまあだ し。流石一般人Aさんって言うだけあるヨー>
<おいいいぃぃぃ! 幾ら何でもぶっちゃけ過ぎだ! し、ししし、しかも言うに事欠いて顔がまあまあとか……っ!>
<事実ヨー。ねえ、スタジオ外の皆さん達ー?>
<ぜ、全員揃って頷くなよ! なんで俺こんなところで公開処刑?!>


 夜空が二つに裂けた。
 思わずそんな幻想をしてしまう程度には、強烈な擦過の音だった。
 見た目は、ありふれた一台のタクシーが、その実、エライ猫かぶりのモンスターマシン――――そんな罠があるなんて、誰が想像するだろう。
 ただのタクシーの停車なら、少なくとも、事故現場も軽くぶっちぎるような、黒い直線+円のアートを、アスファルトに書き殴りはしない。トップスピードか らの急制動で、そのまま白枠の停 車スペースに、すぽりと収まったりもしないだろう。ついでに、さり気なく他の車に挟まれて一台分の隙間しかない場所を狙うなどという、悪魔じみた神業も披 露はしない筈だ。
「ぐへぁ」
 そんな三つの悪夢に、悉く遭遇してしまった童女がいたとしたらどうか。都市伝説か、はたまた笑い話だろうか。少なくとも本人にとっては、現実であり、笑 えない試練だった。
 だからこそ、そこだけは至って常識的に開いてみせたドアから、ふらふらと車を離れた童女の顔に浮かぶのは、なにか大きなことを成し遂げたという、限りな い満足感なのだった。
「おじょーちゃん」
「ひゃいっ?!」が、数秒と経たず、達成感は雲散。「な、なんですか……?」
 恐る恐る。そんな副詞が、ぴたりと当てはまる具合で、振り返る童女。タクシーの中に、猛獣でもいるかのびびり方である。
 だが、生憎と運転席に座るのは、よく日に焼けた肌に、鮮やかなアロハシャツが映える、壮年の男性であった。野暮ったい無精髭と男臭い笑みのセットを、ダ ンディと取るか、だらしないと取るかは、見た人次第だろう。
「あいっ。なんかサー、大っ事なもの、忘れてるサーね」
「大事なもの……」言われて初めて、彼女はぎゅっと握りしめていた物に気付いた。「わ、わわ、ごめんなさい、これっ!」
 くしゃくしゃになっていたが、彼女が一枚の紙幣を突き出すと、運転手は笑顔を深めた。
「帰りも乗るネー?」
「あ、う……か、帰りは、大丈夫です」
「あいあい。じゃあ、お釣り待っててネー」

 見たところ、小学生
 ただ、声まで気を配る余裕がなかったのだなあと、彼女自身が気付いた時には既に手遅れだった。「……ぐへぁはないよね、うん」

 だが、生憎と軌跡の目撃率は低かった。空港の駐車場という条件にも関わらず、すわ何事かと振り返る人影はまばらだったのだ。いつもなら活気に溢れ るその 場所も、夜の帳が、人の気配を攫っていた。
 蒸気を上げるタイヤ/かん、かん、かん、と縮む軋みを上げるボディー/免許への加点はさせないという意思の表れか、"C.Y.C.MCan you catch me?"<捕まえてみな> の文字にすり替えられたナンバープレート。
 そんななにもかもが真っ当でないタクシーが、ドアだけは当たり前に開き、そして一人の女の子を吐き出した。
「はう、はうえぇー」排出された少女=口が回らないのか変わった声をしばらく上げる/どこをどう見ても、完全無欠の小学生児童。
 ほどいても肩口までしかない短い髪は、小さなツーテールにセット済み。大きな、くりくりとした鳶色の瞳は、タクシーのドライビングテクニックの激しさで か、ぐるぐると大回転中。その他、小振りな鼻、ふにふにとした唇、丸っこい顔のライン、どこからどれを取っても同じ主張を示す="現在成長中!"。
 身につけているのは、乱れているが、それでもおろし立てと分かる綺麗なワンピース=本人的にはお気に入りの一品⇔実際は、背伸びしすぎて服に着られてい る状態/知らぬは本人のみ。総合評価=子供らしい愛らしさだけを感じさせる童女/日の落ちた空港には、大凡相応しくない姿。
 当然、保護者同伴が基本。彼女に続いて、二人目が車内から現れる――――かと思いきや、彼女はふらつく足で車に向き直り、言った。
「うあ……っと。う、運転手さん、ありがとう! これっ、お釣りは要りません! ありがとうございました!」
 タクシーの搭乗客は彼女だけであった。その彼女が突き出し、翻った一万円札を、程よく日に焼けた男の手が掴み取る。同時に陽気な声。「おっと、こんなに は頂けねえなあ、お嬢ちゃん!」
 まあ待てよと引き留める運転手。浮き足立った少女だったが、前のめりになりつつ立ち止まった。
「あのっ、急いでいるので……!」
「ハハーッ! そりゃ、お嬢ちゃんを見てりゃ、ナマケモノでも気付くだろーよ!」
「じゃ、じゃあ、行きますよ?」
「いやいや、それとこれとは別ってねぇ。こちとらプロとしてのプライドがある。奉仕じゃないから、必要な分は貰う――――が、貰いすぎはいかーん! のだ よ?」釣りのケースから千円札を取り出し、慣れた手付きで数える男。「それにだ。お嬢ちゃんの待つ飛行機は、まーだ到着してないって」
「ええっ?! で、でも、時間過ぎてるし……」
「大丈夫大丈夫。いつも到着時間から、ちょいずれてみんな来る。加えて今日の天気なら、後十分は余裕あると見るねぇ、俺は。ほい、お釣り」



 

(魔法少女レベル:0(初期レベル))

 

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