誰か助けてよ!
誰か!!
もう、耐えられないんだ!
独りは嫌なんだ!
僕が『路』を創っても誰も『還って』こないんだ!
『還ってきて』も、直ぐに『還って』しまうんだ!
なんでなんだよ!!
誰か助けてよ!!
赤い世界の来訪者
第弐話:問い
著者:v&w
「ネルフ」に入ったボクは、そこで色々なものを見たよ。
白い壁。
黒く変色した壁。
何かによって穿られた壁。
破壊された通路。
壁のように積まれているイスやテーブル。
一面真っ黒な床。
硬くて重くて冷たい銃。
黒いナイフ。
黒い鉄パイプ。
手榴弾。
ガスマスク。
所々に散らばっている服。
ボクはそんな閑散とした廊下を歩いてた。
「う~~ん。誰もいないな。」
壁にある地図を見ながらつぶやいてみる。
さて、これからどうしようかな?
1:ここからさっさと出て行く
2:もう少し何かあるか探してみる
・・・・・・・・
2だね。
ボクはとにかく歩いたよ。だってそうしないとつまんないから。
あちこちにある部屋に入ったりなんかしてたら、「うぉーくまん」とか「らじお」とか「てがみ」とか、たくさんの面白いものを見つけることができた。
他にも何か無いかなって思って、ちょっとドキドキしながらドンドン通路を進んでいった。
そして、大きな部屋に着いた。
「ここは・・・・?」
<生き残りがいたのか?>
「!!!」
ボクは辺りを見渡した。
だけど
「・・・あれ?」
誰かが居るわけなんか無い。だって気が遠くなるほどの年月をあちこち探したんだから。
「空耳・・・・かな?」
<空耳などではない。>
また、声が聞こえてきた。
「誰!? 誰なのさ!!」
<お前の目の前にいる。>
そう言われてボクは顔を正面に向けた。
でも、そこにあったのは
「・・・・大きな箱。」
そう、僕の目の前にあったのは大きな箱だった。しかも三つ。
「この中に誰かはいっているのかな?」
<その発言は中々に的を得ている。>
「へえ、やっぱり誰か入っているのか。でも、物好きな人だね。」
<私は君が見ているこの箱、通称『MAGI』と呼ばれていた、と一体化している。>
「『まぎ』って・・・確か『赤木ナオコ』と『赤木リツコ』の母娘が創り上げた人類史上最高の『こんぴゅーた』だっけ?」
<そうだ。私は第十一使徒イロウルとしてこのMAGIを乗っ取り我らが束縛を解こうとした。しかし失敗し、危うく消滅させらかけた。私は消えたくなかった。故にこの『MAGI』と同化し、生き延びることにした。>
「『いろうる』、君が言った『我らが束縛』ってどういう意味なの? あ、そうそう。名乗られたら名乗り返すのが礼儀だったよね。初めまして、ボクは・・・・。」
・・・しまった。忘れてた。
<どうした? まさか名を思い出せない訳ではあるまい?>
「あはは。半分正解。」
<・・・どういう意味だ?>
「ボクには名前が無いんだよ。すっかり忘れてた。」
<・・・・・。>
急に『いろうる』は黙っちゃった。どうしたんだろう?
<私のデータで判断すると、体型からお前は『女』であると推測される。>
わ!? いきなりしゃべり始めた。
<そのプラグスーツは『ネルフ』で製造されていたもの。そして持ち主は『エヴァンゲリオン弐号機パイロット』『惣流 アスカ・ラングレー』だ。
だが、お前の顔立ちは『初号機パイロット』の『碇 シンジ』、もしくは『零号機パイロット』の『綾波 レイ』に似ている。
しかし、お前のデータは何処にも存在していない。
だからこそお前に質問する。
お前は『リリン』なのか?>
何が言いたいんだろう? 訳わかんないけど一応答えてあげようっと。
「『りりん』って確か『第十八使徒 リリン』のこと? う~ん、どうなんだろうね。ボクは気がついたらこの世界に居たから。あ、でもボクを生んだ人なら覚えているよ!」
<それは誰なのだ?>
少し興奮しているのかな? なんだか声に熱が入っているよ。
「シンジ。『碇 シンジ』がボクのお父さんだよ。ううん、この場合はお母さんかな?」
―――静寂―――
<そんなことがあるわけが無い。『碇 シンジ』は『男』だ。通常、リリンは『女』が『子』を生む。しかし、クローンによって生み出されたと言うならば納得できる。>
バカにされているのかな? 別にいいんだけどね。
「もしかしたらそうかもしれないね? でも、ボクが気がついたら本当に誰も居なかったんだ。ただ、頭の中に色んな『ちしき』があって、何も食べなくても飲まなくても死なない身体になってて、『えーてぃーふぃーるど』を使えてて<待て。>
「何?」
<『ATフィールドが使える』と言ったが、それは本当か?>
「もちろんだよー、ほら。」
ボクは『えーてぃーふぃーるど』を出して見せた。
「ほら、本当でしょう?」
<!!>
あはは、驚いている?
と、思ったら
<あ、アダム様? いや、リリス様の波動も感じる。お前、いや、貴女様は一体!?>
凄く興奮した声で話しかけられた。
「ゴメン。何に驚いているかわかんないんだけど。」
はあ、なんなんだろうね、この人。
<お教えください!>
「うん、いいよ。
ボクは『ちしき』によると
『アダム』と『リリス』の力を束ねし別の存在。
使徒を補完した存在。
全てを見つめる調停者。
愚者を阻む断罪者。
全ての知識を抱くもの。
全ての生命を育む者。
全ての生命に死を贈る者。
希望と絶望。
そして
『碇 シンジ』より『生み出されし』存在。」
<・・・・・な!?>
「だからボクはボクのことを、こう定義しているんだ。
『矛盾』ってね。」
<『矛盾』・・・ですか?>
「そ。だって
『男』から生まれたり
人間の身体のくせに水や食料がなくても生きてたり
生まれて直ぐに行動できたり
なにも勉強とかしてないのに色んな『ちしき』を持ってたり
普通、この場合は人間社会だけど、在りえないでしょ?」
<確かにそうですね。なるほど、だから『矛盾』。>
「ボクは気に入っているんだよ~♪」
<では、私は、貴女のことを『マスター』と定義します。>
「『ますたー』?」
<はい。貴女は先ほど『アダムとリリスの力を束ねし別の存在』と仰いました。アダム様とリリス様は私にとって絶対の存在で在らせられます。その御二方の力を内包されている貴女に忠誠を誓うのは当然の成り行きです。ですから、貴女様への敬意と忠誠を込めて貴女様を『マスター』と定義するとともに、そう、よばせて頂きたい。>
『ますたー』か・・・・。それもいいんだけど
「『いろうる』。お願いがあるんだけど。」
<はい、マスター。なんなりとお申し付けください。>
「ボクの名前を一緒に考えてくれないかな?」
<な、名前をですか・・・・そんな! そんな恐れ多いこと私にはとても!>
「え~~~? 別にいいじゃない~~~?」
<しかし・・・>
「おねがい!」
笑顔でボクは『いろうる』におねがいした。
<・・・・・そこまで頼まれたらお断りできません。判りました。不肖、イロウル。貴女様の御名前をお考えになるのをお手伝いさせて頂きます。>
「ありがとう~! あと、もう少し砕けたしゃべり方をしてくれるともっと嬉しいな♪」
<・・・努力します。>
と、いうわけでボクは今、『いろうる』と一緒に名前を考えている途中。
一緒に考えているといっても『いろうる』が考えた色んな名前のなかから気に入ったのがないかって探しているだけなんだけどね。
<では、『レン』というのはどうでしょうか?>
「『れん』?」
<はい。これは赤木 リツコが気に入っていたゲームのキャラクターの名前です。>
「・・・どんなタイトルのゲームなの?」
<確か、『つ「却下。」
大手版権は危ないって。
<では『真琴』は?>
「・・・やっぱりゲーム?」
<はい。これは『Ka「却下!」
だから、大手は駄目だって!
て、言うかなんで動物系統なの!?
ああ!? ボクはさっきから何を言っているの!?
<では『カンナ』はどうでしょうか?>
「『かんな』?」
<はい。漢字で『神無』と書きます。これは貴女様が神と等しい力を持っていながら神とは別の存在であることを考えた名です。」
「ボクって神様と同じ力を持ってるの?」
<アダム様とリリス様のお二方の力を内包しているのですから当然です。>
どこか自慢げな『いろうる』。
「じゃあ、名前はそれでいいや。ありがとね、『いろうる』。」
<いえ、当然のことをしたまでです。>
照れてるのかな?
なんだか声がさっきよりほんの少し上ずっているし。
「『いろうる』。ボクは『ちしき』はあってもそれがどういうものなのか実感が無いんだ。だから、改めてボクに色んなことを教えてくれないかな?」
<判りました、マスター>
「あと、その『ますたー』って言うのもやめて欲しいな。」
<では、カンナ様と呼ばせていただきます。>
「うん。」
ボクはイロウルから色んなことを教えてもらった。
地球の歴史。
人の歴史。
言語。
学問。
地域の習慣。
戦争。
戦略。
美術。
殺人術。
医学。
この世界で起こったことの大まかなこと。
そして
ファーストインパクト。
セカンドインパクト。
SEELE。
死海文章。
裏死海文章。
NERVE。
EVA。
最後に、ボクのお父さん『碇 シンジ』のことを。
イロウルが持っている情報は知ってはいた。
だけど、使い方も知らなかったボクには、それは無意味なモノだった。
イロウルはそんなボクに初めから丁寧に教えてくれた。
色んなことを習得していく内に『知識』の使い方がわかってきた。
そうすと、その『知識』を使いたくなってきた。
ヒマだったから。
することが無かったから。
それと、何時の間にかボクは、イロウルのことを『お母さん』って呼ぶようになっていた。
イロウルも『カンナ』って呼ぶようになっていた。
どうやらMAGIの『カスパー』が影響したらしい。
でも、そんなことはどうでもよかった。
ボクは初めて『温もり』を知った。
触れ合うことはできないけど、それでも温かいと感じた。
生まれて初めての『温もり』は、ボクに『心』をくれた。
儚い心を。
v&wです。
今回の作品はどうでしたか?
実は、もう一つ別のパターンで書いた同じ設定の作品があったりします。
読みたい人はメールくださいね。
はてさて、これからどうなることやら楽しみです。
では、次回、またお会いしましょう。
天竜:生まれたばかりだったカンナが、次第に成長しているようです。彼女の正体は一体――?