Monsters

今巧人


【第一話 始まり】

 

少女がいた。
枯れた土地で、哀しい瞳を携えて。

「始まってしまう。運命が。」
異質な紅蓮の前髪が、銀の瞳を覆い隠した。ただただ、少女は一際目立つ都市を見つめて嘆く。
「愚かな者達。 要因 ファクター は自分たちの中にあるというのに。」
いつになったら気付くの?と言わんばかりに彼女は呟いた。

 

 

警報ベルの音に叩き起こされ、元宮沙雪は渋い顔をしていた。顔だけ見たら、日本的な顔の少女。白い肌に漆黒の瞳をした17歳かそこらの少女だ。
「トリィ、今日は私達の当番じゃないよね?」
同じく警報で起こされた同室の少女は、既に身支度を整えていた。耳がのぞく程に切り揃えられた銀髪が闇夜に光る。
「…サユキ。警報が鳴ったって事は今日の担当、 第七部隊 マーメイド が落ちた。そう取れる、違う?」
彼女の言葉に沙雪はしぶしぶベッドから降りる。それまで暗くて判らなかったが、沙雪はスカイブルーの髪をしていた。その腰まである髪を縛りもせずに寝巻きの上からロングコートを羽織る。髪の色と同じ、スカイブルーのコートを。
「トリィ、 ロン 水凪 みなぎ 佐凪 さなぎ を呼んで。」
「とっくに起きてるよ。」
  そう言い入ってきたのは黒髪の少年。つづいて少年より長身の女性が入って来た。
「水凪は?」
「…こっちですぅ…」
眠たげな声が長身の女性、佐凪の後ろから聞こえた。多分この室内にいる人の中で一番小さい彼女は、しっかり姉に隠れて見えなくなっていた。
「ニアは…寝てるからしょうがない。行くよ。」
部屋を出て、廊下のダストシュートに沙雪が滑り込む。
「いくら急いでるって…俺これ苦手なんだけどなぁ。」
「…龍、なんなら窓から落とすわよ?」
「トライティス、それぐらいにしないと龍泣いちゃうよ?」
「泣くかちびっこ!!」
  自分の身長の事を的確に言われ、水凪がむくれる。
「お先に。」
横をついと抜け、佐凪がダストシュートへ入っていった。
「私も行くわ。沙雪に怒られるのはいやだし。」
「あ、待ってよ~。」
気付けば廊下に残ったのは龍一人。
「わぁったよ!!行けばいいんだろ!!」
  逆切れ状態で、少年はダストシュートへ飛び込んだ。

 

 

「急げ!!ジープを回せ!!」
「被害状況は!?」
  沙雪が怒鳴りながら聞く。地下の喧騒のせいだ。
第七部隊 マーメイド はほぼ全滅だ。幸い死者はいないが、ほとんど重傷を負っている。」
沙雪は担架を見て眉間に皺を寄せた。火傷や裂傷に苦しむ少女たちが目に入ったからだ。
第七部隊がマーメイドと呼ばれるのは訳がある。部隊の人間全てが水を使う女の異能者達だからだ。水の能力は女にしか現れず、出現率も高い。だから、マーメイド人魚姫と呼ばれたのだ。
「・さゆ・・さ…」
「愛華!!」
一人の少女に呼ばれ、沙雪は駆け寄る。愛華、と呼ばれた少女は第七部隊の隊長で、同じ隊長の沙雪とは面識があった。
「緑の…た・か…きをつけ・・て…」
それだけ言うと少女は意識を手放した。
「…また…緑の鷹の仕業…!!」
  沙雪の瞳に影がさす。怒りに手を握る力が強くなっていた。
「隊長!!」
いつの間にジープを回したのか、佐凪がトライティス以下三名を乗せ沙雪を呼ぶ。そして一気にスピードを上げ、沙雪の横を通る。
「よっと。」
  沙雪はそれにひらりと飛び乗り、助手席に腰を沈めた。
「サユキ、第七部隊から事情はある程度聞いたわ。奴らのポイントは旧聖都の西、フィグス。」
  トライティスの白い指が、地図をなぞる。最初は自分たちの駐屯地、現聖都のジャクス。そして湖を挟んで反対側の目的地に指を当てる。
「龍が頑張れば、ここから約一分。」
「はぁ!!?ちょっと待った!俺にこのジープ持てっての?」
  龍が抗議の声を上げた。
「なんなら私がやろうか?」
飄々とトライティスは言う。地図上ではこのまま走れば湖に突っ込むだろう。
「龍、頼む。」
  沙雪が龍に言う。それは決して命令とかそういう強制ではなく、彼女の頼みだった。
「わあったよ…。しっかり摑まっとけよッ!!」
後部座席にいたまま、彼は言う。そして湖が目前というとき、佐凪がギアをオーバートップに入れ、アクセルを強く踏み込む。勢い良くジープが宙を舞った。その時、彼らの周りを風が巻きつく。
「人使い荒いっつーの!!」
  龍の髪が黒さを失い、白くなる。ジープに纏わりつく風のように。
「見えたよ~!!」
  水凪の間延びした言葉に、沙雪が反応する。
「龍、ちゃんと岸まで運んでね!!」
「あっ!!またお前!!」
龍の抗議の声を聞き入れず、沙雪はジープから飛び降りた。下はまだ、湖だ。
「見られたくないんだ、殺すところは。」
重力に逆らいもせず、沙雪は手を伸ばす。目前に迫った湖の水に。
「行こうか。」
  その言葉を待ちわびていたかのように、水が沙雪を受け止める。沈みもせずに、彼女は前を見据えた。
「一人残らず…。」
  消してしまおう、と唇が動いた。
  湖が鼓動する。歓喜の声を上げて。それは波を生み、彼女の体を包み隠した。

 

 

後書き
   ども、今巧人です。この作品は発案が確か高校の初めだったでしょうか。それから三年以上もたってから今更描いてみました。てか、受験勉強中になぜか浮かぶんですよね。ネタが(笑)
龍「現実逃避じゃねぇ?」
トライティス「受験放棄じゃないかしら。」
   そこ!うるさいよ!!受験放棄はしてない!!
沙雪「お茶飲みたいなぁ。」
水凪「マシュマロ食べたいなぁ。」
佐凪「…食べる?」
沙雪・水凪「わ~い!!」
 ・ ・・イジメデスカ?
トライティス「平和だわ。」
  どの口がそう言う?
  さて次回、仮題名(あくまでも仮がポイント)、心の闇。
沙雪「いつ書き終わるのやら…。」
  そこ!!玄米茶啜りながら変な事言わない!!

ジン:ご指名です。 お客様の対応をお願いいたします、アヤメさん。

アヤメ:…OK,OK…ウェルダンになりたかったらもっと続けなさい。

ジン: ごめんなさいごめんなさいごめんなさいマジ冗談ですいやホントにちょっとした出来心だったんです心の底から詫びますから許してください。

アヤメ:ったく…。 それで今回は、今巧人の作品の感想地帯に駆り出されるってことね。

ジン:まあ、そうだけど。 ちなみに始まってるよ?

アヤメ:んなこたぁ百も承知よ! ま、ちょっと思ったことでも述べとこうかな?

ジン:ん? 何?

アヤメ:いや、ただ…この沙雪って奴と私って、相性ワルソーだなー、と。

ジン:あ。 能力で見たらそうかもね。 でも、まだホントの所は分からないよ? 始まったばかりなんだからさ。 少し様子見といこうよ、ね?

アヤメ:はいはい。 じゃ、次は挿絵付きの作品Please。

ジン:ちょ…そ、それは幾らなんでも…

アヤメ:ジョークよ。半分位ね。

第二話へ

戻る

SEO [PR] !uO z[y[WJ Cu