ぼくたちは、恋していく。

ふゆみ先輩

By KEN








「しゅ・・・シュウちゃんの初恋っていつ?」

「え・・・」






ちせとつきあって一ヶ月が過ぎた。
あの日から、ぼくらはちゃんと恋をしていると思う。
毎日、二人で学校へ行って。
時々、一緒に昼飯を食べたり、学校の帰りとかは一緒に帰る。


ぼくたちは、恋をしているはずだ。
・・・だけど、ちせの質問にぼくは、答えれなかった。






























「シュウジの初恋の人ォ!?」


アケミの大っきな声が響く。
アケミってここが教室なのわかってるんかなー?


「あ・・・うん。ホラ、アケミなら、シュウちゃんとずっと仲良かったから」


少しあたふたして言った。


「・・・知ってるかなって」

「はぁ・・・なんも仲良くないって!同じ陸上部だっただけだべさ」


溜息をつかれて、呆れたように言われた。
少し安心もする・・・。


「そっか・・・」


少し溜息が入った言葉。
心を落ち着けるように言い聞かせる・・・。


「なんてね、・・・ウソ・・・」

「えっ!?」

「・・・ごめん、ちせ。実は・・・あたしなの・・・初恋・・・の相手」

「えっ・・・あっ」


アケミがシュウちゃんの・・・。
そうんんだ・・・。
じゃ、シュウちゃんが言えないのも無理ないか。


まだ・・・気があるの?


・・・なんちゃって。


「そ・・・そうだった
『だったらやだよねー』


・・・・・・。
・・・・・・・・・。


「あららら、ごめんごめん!そんなに真に受けるとは思わなかったわ」

「違うの・・・なんか自分があんまりバカっぽくて、呆れたってゆーか、悲しかったの・・・」


なんとなく、涙が出てきた。
うぅ、なんかホントに自分がバカっぽく感じた。


「でも、そーかー、あんたらカップルもついにそーゆーの、気にするところまでいったかー」

「う、うん・・・」

「うんうん、なんだかフツーのカップルみたい!やればできるべさ、ちせ!!」

「あ・・・ありがと・・・」


なんだか、わかんないけど、拍手を送られた。
アケミ・・・なんかバカにしてる?
そ、それより・・・。


「でもさー」

「ん・・・?」

「これでいーのかなって。あたしのせいでうまくいってないかもしんないのっ」

「あんたのせいって、何やったのよ、あんた」

「・・・何って・・・」


あたし、最近シュウちゃんにあたしのお父さんと会わせちゃったの。
なんか、それから気まずくなっちゃった。
・・・なんちゃって。


「いろいろヒ・・・ヒミツなの・・・」

「ま、ちせのヒミツなんて、たかがしれてるよね。高3になって初めてブラつけとか、最近やっと初潮が来たとかね」

「ちっ、違うもんっ!」

「ま、そのヒミツのせいで、キマズクなって、ムリして明るく会話しようと、ぽろっと言ったコトバが・・・

『シュ、シュウちゃんの初恋って、いつ?』

・・・だったわけだ?」

「・・・・・・・・・う・・・うん・・・。なんで、わかるの?」

「そりゃ、単純だもの」


あたしたちって分かりやすいんかなー。
なんでもかんでも、ばれそう。


「・・・そっ。そしたらシュウちゃん、なんか『ギクッ』として、そのあとロコツに『しまった』ってカオして・・・」

「はぁ・・・不器用だねー。・・・で?ちせとしては、その初恋の人にシュウジがまだ気があんのとか心配になったってわけ?」

「そ・・・そこまでは思わないけど。・・・なーんか、触れてほしくないところに無神経に触れちゃったんかなぁって・・・」


最後に小さく『あたしバカだから・・・』と付け加える。



『バカ』


うぅ・・・。
包丁が刺さった感じだ。
額に。
・・・バトルロワイヤルで一番最初の生徒が死んだ時みたいに。


「つきあってんだもん。そりゃいろいろ触れるべや!いーしょや触れたら謝れば!恋人どーしなんだもん」


アケミを見ると、なんか真剣なカオツキが嬉しかった。


「シュウジは口悪くてバカだけど、そんなことネに持つヤツじゃないよ。カオは怖いけどなんでも前向きにどーにかしようってしてくれるヤツだ」

「うん・・・」

「ギクッとしたのは恋愛話に慣れてないから!しまったってカオしたのは、あんたをキズつけないようにって」


何度も頷く。
なんか、コトバが染み込んできた。


「どんだけつきあってんだ。それくらいわかれ!」

「・・・うん。アケミ・・・ごめん。ありがと・・・」












・・・シュウジの初恋か・・・


やっぱまだ引きずってんのかな?
バカ・・・。


ふゆみ先輩のこと・・・


あーは、言ったけどちせには気取られなかったかな?
できれば、あの時のことは、思い出したくない。
忘れるべきなんだ、ちせのためにもシュウジのためにも。






























「どーかな、これ?」

「ん?・・・あー、中々いーんじゃねー」


久しぶりにちせとベントーを食べた。
少し変わった事は、ぼくにちせがベントーをつくってきてくれたこと。
少し照れと言うものがあって、中々、素直にうまいとか言ってやれない。


それと、なにかちせがぼくの事を気にしている感じがする。
・・・なんか、キマズソーな・・・。
うまく言えない。


「じゃーさ、今度もつくっていー?」

「あ、あー、頼むわ。購買に行くのもメンドーだしな」

「うんっ」


ホントーに嬉しそうな笑顔。
・・・こいつにとっては、さらに負担をかけるよーな事なのに。
・・・いーんかよ・・・。


「あ・・・もうちょっとでお昼休み終わるね」

「そー・・・だな」

「シュウちゃん、今日もサボり?」

「・・・いんにゃ、流石に連続はなー」

「じゃ、早くいこーよ」






























ちせとつきあい始めた頃から、ふゆみ先輩の夢を見るようになった。
なんだか、あの日と同じ人なつっこい顔で、ただ笑ってくれる。
そんな夢だ。


そんなせいか、なんとなくちせと目を合わせられない時がある。
やましい事とかじゃなくて・・・。
なんだか・・・怖くて。


別にやらしー事とかしたわけじゃねーんだ。
それに、したいわけじゃねー。


「ん、どーしたの、シュウちゃん?公園に寄ってこーなんて?」


第一よー、ちせなんて、なんかそーゆー対象じゃねーよ。
そりゃ、かわいいけどさ。
子供っぽいしさ。
やっぱオトナのミリョクが足んねーべや。
・・・ってゆーか・・・。


「どーしたの?」


う・・・。
すんませんホントはメチャクチャしてーんです・・・。
そーゆー、やらしーこと。


「い・・・いや・・・なんでもねー」


・・・し・・・しょーがねーべや。
こんなにかわいーんだし。
ぼくだっておトシゴロの男の子なんだし・・・。
・・・・・・。


「あ・・・」


やべー・・・。
勝手に手が動いちまう・・・。
なんか、触りてー・・・。


なんか、ちせがビクッって動くとこが、オモシレーしかわいーんだ。
それに、夏服ごしのちせの肌はやわらかくて、温かくて・・・。


「ど、どーしたのシュウちゃん・・・?」

「え・・・えっとよー・・・」


ちせの親父と会って、約束されてから・・・。
なんかうまく言えねーけど、なんかちせになにをするにも悪い事に感じる。
話そうとするときだって、イイこと話そうとすればするほど、頭ん中が真っ白になる。
なんだか、少しイライラする。


コトバなんて世の中になければって思ったりする。
そしたら、触れるとかしかお互いの事を伝えれないから、戸惑いなく触れられるし・・・。
そしたら・・・ぼくらはもっとうまく・・・。


「・・・シュウちゃん・・・」


・・・・・・。
少し乱暴にちせを抱きしめる。
自分の鼓動を聴かせるように・・・。


「しゅ・・・シュウちゃん・・・?」

「・・・わりぃ。なんかオレ、今、うまくしゃべれねーから・・・」

「うぅん・・・ちょっと・・・恥ずかしいだけ・・・」

「わりぃ・・・」


ちゃんと背中に手をまわしてくれて嬉しかった。
ずっとこーしていたい・・・。


「あ・・・シュウちゃんの心臓の音凄いね・・・」

「あ・・・アホ・・・。・・・っ!?」


キキッ・・・。


一台の自転車が通り過ぎていった。
・・・その方向を見なければよかった・・・。


まさか・・・


・・・・・・。


・・・・・・・・・。


・・・な、わけないよな。


続く


後書き


え~、ふゆみ先輩登場します。
あーゆー先輩って何かいいっすね(汗
私の好みはふゆみ先輩とアケミを足して二で割ったような感じの人が好き。
でも、そーいう理想の人はいないので、ふゆみ先輩かアケミのどちらかがいーなー。
・・・あはは(汗


天竜:抱き合っている時に、初恋の女性が過ぎていく。間が悪いのか、それともじっと見られたわけじゃないから良いのか。

いや、実際は見られていたかも? 次回に期待です。

ぼくたちは、恋していく「ちせの親父」

ぼくたちは、恋していく。ふゆみ先輩(2)

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